八月納涼大歌舞伎 |
人気の第三部。演目は
河竹黙阿弥の作による歌舞伎舞踊『紅葉狩(もみじがり)』と
野田秀樹の作、演出による新歌舞伎(?)『野田版 愛陀姫(あいだひめ)』。
席はドブ席(花道より左側の席)の前から4番目の一番花道寄り。
ドブ席とはいえ、花道上で演技する役者さんの後ろ姿を間近で見られますし
臨場感たっぷりの雰囲気を味わえる良席でありました。
『紅葉狩』
去年12月に、玉三郎さん演出による、能バージョンは観たのですが
オリジナルは初めてです。
能バージョンもオリジナルもどちらもいいですねぇ~。
これは私、大好き。何度も観たくなる演目です。
今回のオリジナルの場合は、何と言っても音楽の競演!
三味線の音を聞くだけでも血が沸き立ちます!
お姫さま・・・実は鬼を演じるのは中村勘太郎くん・・・
前に観た能バージョンでこの役を演じていたのが玉さまでしたので
今回はついつい「大丈夫かぁ?」と思ってしまったのですが・・・
ゴメンナサイ!勘太郎くん、すごくヨカッタです!
お化粧がヨカッタのかな?とても綺麗でした。
扇子を何度か落としてしまったのが気になったのですが
後見さんの息の合ったフォローが間近で観られて興味深かったです。
ただし、御姫さま一行に変身した女たちの怪しさ・・・とか
鬼になってしまった後のオドロオドロしさ・・・
みたいなのは、やはり能バージョンに軍配があがったかな。
『愛陀姫』
うーーーーーーーーーーん!
すんません・・・私は、イマイチに思いましたねぇ。
今までの野田版演目は、元々歌舞伎の演目を野田風にアレンジしたものですが
今回はオペラを歌舞伎風にしたもの・・・
とはいえ、はっきりいって、これは「新歌舞伎」とか「邪道歌舞伎」なんてもんじゃない。
はっきりいって、歌舞伎ではない。私は断言しますね。
野田氏がやりたかったことは何となく分かります。
このお話の普遍性みたいなものは
歌舞伎でも十分通じると思うんです。
去年、初めてオペラを見て、歌舞伎とオペラには似たところがあると感じていたので
そういう意味では、歌舞伎とオペラの融合・・・というのは理解できます。
でも、その手法には、お互い相容れないものがあるんですよね。
だって、セリフがまず、完璧に歌舞伎のセリフとは一線をおきますよね。
私はオペラの「アイーダ」は観たことがありませんが
おそらく歌で表現するところを
今回は役者が長台詞でベラベラ(というより、遊民社にありがちな絶叫風)語るんですが
そのセリフが歌舞伎としたは無理がありすぎ。
それがもう、私は乗れなかった。
いや、「ひとつの新しい試みの舞台」としては十分あり得るし
完成されたエンタテインメントだったと思います。
ただし、もし歌舞伎の演目として上演するならば
セリフのアレンジにはもっともっと工夫が必要だったのでは?
「歌舞伎が観たい」私は、そう思いましたね。
舞台装置や小道具なんかは面白かったと思います。
最後に愛陀姫と駄目助が抱き合うシーンで
風船のハートが浮き上がるシーン。笑いも起きてましたが
あれは野田さんが遊民社なんかでもよく使うパターンですよね。
あまり場面を重くしないように、わざとシュールな演出をするんですよね。
ただ・・・歌舞伎座でやると、妙に安っぽく見えてしまったのは私だけでしょうか。
あ、あと、扇雀さんと福助さんの「インチキ祈祷師2人組」!
この2人は面白かった~。
この2人の存在があったのが救いだったかな(苦笑)
そういうわけで、かなりの辛口レビューでした。